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委託者兼受益者による受託者の解任の可否をめぐる裁判

東京地裁令和5年3月17日判決

 

 

 

争点となった条項

 

信託契約に以下のような規定がありました。

 

「受益者は、受託者との合意により、本件信託契約の内容を変更し、若しくは本件信託契約を一部解除し、又は本件信託契約を終了させることができる。」

 

 

 

受益者側の主張

 

受益者は、信託法58条1項(委託者及び受益者はいつでも合意により受託者を解任できる、という原則規定)に基づき、受託者の同意を得ずに受託者を解任しようとしました。

 

 

 

裁判所の判断

 

裁判所は、上記の信託契約上の規定について、次のように解釈しました。

 

この規定は、単に「変更・一部解除・終了」について受託者との合意を要求しているだけでなく、受託者の解任についても受託者との合意なしにはできない趣旨を含んでいると判断

 

これは信託法58条3項が認める「別段の定め」(法律の原則ルールと異なる定めを信託行為に置くこと)に該当する。

したがって、受託者の同意を得ずに受益者が行った受託者の解任は無効と判断されました

 

 

 

実務上の意義

 

信託法58条1項は、委託者・受益者の合意だけで受託者を解任できるとする任意規定ですが、同条3項により信託行為(契約書)に別段の定めを置けば、その定めが優先します。本判決は、契約書に明示的に「受託者の解任には受託者の同意が必要」と書かれていなくても、変更・解除・終了に関する条項の解釈から、受託者の同意を要する趣旨が読み取れる場合には、受託者の同意なき解任は無効になり得ることを示した点が重要です。

 

つまり実務的な教訓としては、信託契約書で「変更・一部解除・終了には受託者との合意が必要」という条項を置く場合、それが受託者の解任にも及ぶ趣旨なのかどうかを明確にしておかないと、後になって解任の可否をめぐって紛争になり得る、という点が示唆されます。

 

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